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白黒ハーモニー

小説版「白黒ハーモニー ~林檎と拳銃~」はこちら

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配役 ♂2♀1

所要時間 ~15

 

登場人物
アメリー 

 男前な女の子。鳥のブルーノと一緒に旅をしている。
カミーユ 

 繊細な男の子。ライオンのディルクと一緒に暮らしている。
エドモン 

 カミーユからライオンを奪い、売ろうとしている男。やなやつ。
 


あらすじ
鳥を連れた男前な少女とライオンを連れた繊細な少年の

冒険のはじまりの物語。



役表

アメリー:
カミーユ:
エドモン:


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【街中・昼】

 林檎を上に投げながら歩くアメリー。

 


アメリー 「ふんふーん(鼻歌)

      さっき親切なおばちゃんに林檎もらったし、この街は親切な人が多いみたいだな。

      今日はいい日になりそう~(林檎をかじる)んまいっ」
 


 鳥のブルーノが飛んでくる。
 


アメリー 「お、ブルーノ。どこ行ってたんだよ? ほら、お前も食うだろ林檎。……ん? どうした?」
 


 ブルーノがどこかへ飛んでいく。向かう先には木の実が落ちている。
 


アメリー 「おいブルーノ! どこ行くんだよ! ……あ、食いもん見つけたのか」
 


 ブルーノとライオンのディルクがぶつかりそうになる。
 


アメリー 「危ない! ブルーノ!」

カミーユ 「わ、鳥だ! 止まれ、ディルク!」

 


 間一髪でブルーノが避ける。
 


アメリー 「ブルーノ無事か? ごめんな、こいつその木の実狙ってたみたい……って、ライオン?」

カミーユ 「こちらこそ、ごめん。食べ物のことになると周りが見えなくなるんだ。

      こいつはその……猫だよ」

アメリー 「いや絶対ライオンだろ! すげえ、初めて見た。かっこいいなぁ、お前。名前なんてんだ?」

カミーユ 「ディルクだよ。悪かったね」

アメリー 「木の実のことか? 大丈夫大丈夫。ブルーノは鳥だからな。

      ライオンの攻撃くらい、華麗に避けられるぜ。な、ブルーノ」

カミーユ 「……攻撃したわけじゃないことをわかってもらえると嬉しいんだけど」

アメリー 「わかってるよ。つーか、もしかしてお前らも腹減ってんのか?」

カミーユ 「いや、そういうわけじゃ」

アメリー 「食いかけでよければ林檎食うか? お前弱そうだし、食いもん手に入れるの苦労してんだろ」

カミーユ 「君失礼だね……。買い物の途中で、ディルクが木の実に食いついただけだよ。

      ごはんはちゃんとあげてるんだから」

アメリー 「なーんだ。じゃあこの林檎はやんない」

カミーユ 「別にいいよ。そういう君たちはお腹が空いているの?」

アメリー 「まぁな。さっき知らないおばちゃんに林檎もらったからいいけど、

      もう何日も飯食ってねぇんだよ。な、ブルーノ」

カミーユ 「何日も?」

アメリー 「そうそう。ま、旅してたらそんなのも慣れっこだけどさ」

カミーユ 「空腹に慣れたらまずいと思うんだけど……。じゃあ、さ」

アメリー 「んぁ?」

カミーユ 「よかったら家でごはん食べてく?」

アメリー 「いいのか!?」

カミーユ 「う、うん。危うく君の鳥に怪我をさせてしまうところだったし、構わないよ」

アメリー 「すっげえ嬉しい! ありがとう! ブルーノ、喜べ! 数日ぶりの飯だぞ!」

カミーユ 「はは。じゃあ、案内するよ。行くよ、ディルク」

アメリー 「ちなみにそのライオンはうちの鳥食べたりしないよな?」

カミーユ 「……猫だよ。食べないから大丈夫」

アメリー 「ならいいや」



【カミーユの家・昼】

アメリー 「ここがお前んちか! ちっちぇーな!」

カミーユ 「君は本当に失礼だな。……ねぇ、そういえば僕たちお互いの名前を知らないよね」

アメリー 「そういえばそうだな。ライオンの名前しか聞いてねーや」

カミーユ 「ね、猫だってば。……僕はカミーユ。よろしくね」

アメリー 「あたし、アメリー。よろしくな、カミーユ」

カミーユ 「うん。じゃあ、僕はごはんの準備をするから、君はディルクの相手でもしてて」

アメリー 「名前聞いたくせにまだ君って呼ぶつもりなのか?」

カミーユ 「え? あ、あぁ。ごめん。アメリー」

アメリー 「おう! へへっ」

カミーユ 「ちなみに、ブルーノって何食べるの?」

アメリー 「んー何でも食うけど。果物と野菜が好きだよな、ブルーノ」

カミーユ 「果物と野菜、ね。わかった」

 


 カミーユ、料理を始める。
 アメリーはディルクのたてがみに身体を埋める。

 


アメリー 「うおお、ディルクお前ふわふわだな。気持ちいい!

      つーかここ動物飼っていいのか? カミーユ」

カミーユ 「一応、犬や猫ならいいってことになってるよ」

アメリー 「だからカミーユはディルクのことを猫って言い張ってるんだな」

カミーユ 「それもあるけど……。って、言い張ってるんじゃない。ディルクは猫なの」

アメリー 「まーた言ってる。頑固な飼い主だな、ディルク」

カミーユ 「そんなことを言う人にはごはんあげないからね」

アメリー 「わ、悪かったよ。ほら、ブルーノも謝れ」

カミーユ 「ブルーノのせいにしないの」

アメリー 「あたしとブルーノは一心同体だからいいんだよ。な、ブルーノ。あ、だめ?」

カミーユ 「ブルーノもいい加減にしろってさ。ほら、ごはんできたよ」

アメリー 「はえーな! お、美味そう!」

カミーユ 「ブルーノには果物と野菜を食べやすいサイズにしたものを用意したよ。いい?」

アメリー 「もちろん! ほら、ブルーノ。飯だぞ」

カミーユ 「ディルク、ごはんだよ」

アメリー 「うおお、すげえ! 美味いな!」

カミーユ 「大袈裟だな。って、そんな慌てて食べなくてもごはんは逃げないよ」

アメリー 「だって美味いんだもん。それに数日ぶりの飯だし。んめえ……!」

カミーユ 「はは。喜んでもらえてよかったよ」

 


 食べ終える。
 


アメリー 「いやぁ、美味かった。ありがとな」

カミーユ 「いーえ。貴重な木の実を取ってしまったお詫びだよ」

アメリー 「おかげで美味い飯が食えたからいいよな、ブルーノ」

カミーユ 「そう言ってもらえると僕も嬉しいよ」

アメリー 「あ、そうだ。何か礼をさせてくれよ」

カミーユ 「え、でも僕はお詫びとして」

アメリー 「詫びは最初の一口でもう済んでる。

      あれだけ美味いもん食わせてもらったんだから何かさせてくれよ。あ、金はねぇぞ?」

カミーユ 「うーん……そうだな……」

アメリー 「何かねぇの?」

カミーユ 「……ないよ。大丈夫。僕の作ったごはんを、アメリーが美味しそうに食べてくれただけで満足」

アメリー 「なんだ、それ。欲のねぇやつだな」

カミーユ 「はは」

アメリー 「じゃあ、あたしたちはそろそろ行くよ。飯、本当に美味かった。ありがとな」

カミーユ 「うん。じゃあね」

アメリー 「おう! 行くぞ、ブルーノ」

 


 アメリーとブルーノ、立ち去る。
 


カミーユ 「……女の子に頼るわけにはいかないもんね。大丈夫だよ、ディルク。お前は僕が守るからね」



【カミーユの家・夜】

 ノックの音がする。

 


カミーユ 「はーい。……ん? ディルク、隠れてて(小声で)」
 


 扉を開ける。
 


エドモン 「……よう。久しぶりだな坊主」

カミーユ 「……っ」

 


 扉を閉めようとするが、エドモンに押さえられる。
 


エドモン 「随分な歓迎じゃねぇか。その顔だと、俺が何をしに来たかわかってるんだよな」

カミーユ 「わからない。帰って」

エドモン 「嫌われたもんだな。でも坊主、よく考えろ。借りたものは返すのが礼儀ってもんだ。そうだろ?」

カミーユ 「お前から何も借りた覚えはない!」

エドモン 「そうだな。お前は何も借りてない。盗んだんだ」

カミーユ 「盗んでなんか……!」

エドモン 「だったら尚更返してもらわねぇとな?」

 


 銃をカミーユに向けるエドモン。
 


カミーユ 「銃……そんなもの、撃ったら人が来ちゃうんじゃない?」

エドモン 「だったらどうした」

カミーユ 「人が来たらまずいでしょ。違法な研究ばかりしてるんだから」

エドモン 「悪いが坊主。うちは表向きは綺麗な研究所なんだ。

      そしてお前はうちのペットを盗んだ犯罪者。人が来たらまずいのはどっちだ? よく考えろ」

カミーユ 「ごはんもまともに食べさせてなかったくせに、よく言うよ」

エドモン 「そうだな。でもお前の方が分が悪いのはわかっているはずだ。

      こんな街に来て、隠れるような真似をしているんだからな」

カミーユ 「……っ」

エドモン 「俺だって無駄な騒ぎは起こしたくねぇんだ。金なら払う。前からそう言ってるだろう」

カミーユ 「ディルクは、渡さない」

エドモン 「物わかりの悪いガキだ」



【街中・夜】

アメリー 「ブルーノ、そろそろ寝床に向かおうぜ」

 


 ブルーノを連れて、街を歩く。
 


アメリー 「それにしても、今日の飯は美味かったなぁ。

      久々にあんなちゃんとした飯食ったよ。な、ブルーノ」
 


 カミーユの家の近くを通る。男の声がする。
 


アメリー 「ん? あれって、カミーユの家だよな。あの男は客か?」
 


 目を凝らす。
 


アメリー 「(驚いたように)あれは……銃、か? ……行くよ、ブルーノ」
 


 カミーユの家へ向かう。



【カミーユの家・夜】

エドモン 「いい加減にしろ。そろそろ隠しきれないでかさになってるだろう」

カミーユ 「あんたたちが追ってこなきゃ、隠す必要はないだろ」

エドモン 「……わかった。警告はしたぞ。提案もした。……後悔しても、知らないからな」

アメリー 「カミーユ!」

エドモン 「ぐっ」

 


 アメリー、エドモンを後ろから蹴り上げる。
 


カミーユ 「え……? あ、アメリー?」

アメリー 「なんか嫌な雰囲気だったからつい。大丈夫?」

カミーユ 「う、うん」

エドモン 「誰だ、貴様は……」

アメリー 「アメリーだよ。だめじゃないか、人にそんなものを向けるなんて」

エドモン 「……何の、用だっ」

 


 エドモンはアメリーに回し蹴りをしようとする。
 


カミーユ 「アメリー!」

アメリー 「当たるかよっ」

 


 アメリー、回し蹴りを返す。
 


エドモン 「くっ……生意気な、嬢ちゃんだ、なっ」
 


 エドモン、アメリーの足元に蹴りを入れる。
 


アメリー 「だから、そんなの当たらないって」

カミーユ 「アメリー危ない! 銃だ!」

 


 エドモン、銃を構える。
 


エドモン 「ふっ……遅い」

カミーユ 「うああああ」

 


 カミーユ、エドモンに体当たりをする。
 


エドモン 「甘い!」
 


 エドモン、ブルーノを撃つ。
 


アメリー 「ブルーノ! ……てめぇ、よくもっ」

エドモン 「動くな。その鳥に、とどめを刺されたくなかったらな」

カミーユ 「……甘いのは、どっちだ」

エドモン 「あ?」

カミーユ 「甘いのはお前だって言ったんだ! 行け、ディルク!」

 


 ディルク、エドモンに襲い掛かる。
 


エドモン 「がはっ……くそっ」
 


 足を引きずりながら、扉の方へ向かうエドモン。
 


アメリー 「逃がすか!」

カミーユ 「アメリー」

アメリー 「あぁ!?」

カミーユ 「いいんだ」

アメリー 「は?」

カミーユ 「殺すつもりはない。……どうせ、また次の奴がやってくるんだ」

エドモン 「(息を切らしながら)……そうだ。その通りだ。どこまでも、追いかけるからな。

      覚悟をしておけ」

アメリー 「てめぇ、まだそんな余裕が」

カミーユ 「大丈夫だよ、アメリー。それより、ブルーノは」

 


 立ち去るエドモン。
 


アメリー 「……羽に掠ったみたいだ」

カミーユ 「手当ての準備をするね」



アメリー 「なぁ。お前、あいつらに追われてるのか?」

カミーユ 「まぁね。……僕が、ディルクを連れて行ったから」

アメリー 「ディルクを?」

カミーユ 「うん。あいつらの研究所で偶然見かけたんだ。虐待を受けているディルクを」

アメリー 「それで、か」

カミーユ 「……うん」

アメリー 「ここを出ていくのか?」

カミーユ 「そうするしかないよ。きっとまた、別の奴が追いかけてくる」

アメリー 「だったら、あたし達と一緒に来るか?」

カミーユ 「え?」

アメリー 「あたしとブルーノは、あっちこっち旅をしてるんだ。

      カミーユとディルクも、行くとこねぇんなら来いよ」

カミーユ 「……でも、僕は何の役にも立たないし。むしろ迷惑に」

アメリー 「飯」

カミーユ 「めし?」

アメリー 「あぁ。お前は飯係だ。今日食わせてもらったもん、めちゃくちゃうまかったからな」

カミーユ 「……それで、いいの?」

アメリー 「大事なことだぞ。美味い飯は、生きる糧になる」

カミーユ 「生きる、糧」

アメリー 「あぁ。だから来いよ。な」

カミーユ 「……うん。わかった、行くよ」

アメリー 「よし! じゃあこれからよろしくな、カミーユ!」

カミーユ 「うん! よろしく、アメリー」

 

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