純真トラップ
配役 ♂3♀2 不問1
所要時間 ~10分
登場人物
エリク ♂♀
主人公の少年。無邪気で単純。少し手癖が悪い。
フローラに憧れている。ラルスと共に初任務に臨む。
ラルス ♂
エリクの初任務のパートナー。面倒なことを嫌い、ちょっぴり無愛想。
ヴェルナー ♂
ボスの側近。指示を出す。フローラの気持ちを知っている。エリクを見守る。
フローラ ♀
ボスの娘。エリクが好き。基本的に丁寧かつ可憐に振る舞っているが、小さい頃から知っているヴェルナーが相手だと素が出てしまう。
グレーテル ♀
屋敷に住む男口調の女性。ヘンゼルの双子の妹。市長の娘のペンダントを盗んだ。
ヘンゼル ♂
屋敷に住む女口調の男性。グレーテルの双子の兄……のはずだが、グレーテルを姉と呼ぶ。市長の娘のペンダントを盗んだ。
あらすじ
初任務に任命されたエリク。
しかしエリクは、苦手なラルスと組むことになる。
フローラに報告し、任務に出かける。
その任務は、ペンダントを取り戻すこと。二人は任務に挑む。
役表
エリ:
ヴェ:
フロ:
ラル:
グレ:
ヘン:
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【ギルド内・カウンター】
エリクに指示書を渡すヴェルナー。
ヴェ「おめでとう、エリク。初任務だ」
エリ「えぇ!? 本当ですかヴェルナーさん!」
ヴェ「ああ。これがボスからの任務だ。受け取れ」
エリ「わぁ、ありがとうございます……!」
ヴェ「だがな、この任務を任されたのはお前だけじゃないんだ」
エリ「誰かと一緒に組むってことですか?」
ヴェ「そうだ。今回のお前のパートナーはラルスだ」
エリ「げっ」
ヴェ「ははは、正直な反応だな。まぁ頑張れよ。あいつはそんな悪い奴じゃねぇ」
エリ「わかってます。……ただ、ちょっと苦手なだけで」
ヴェ「ならいいんだ。今日準備を済ませて、明日ラルスと出発してくれ」
エリ「わかりました!」
ヴェ「じゃあな。がんばれよ」
エリ「はい!」
【ギルド内・バルコニー】
エリ「フローラ様!」
フロ「エリクさん? どうかされたんですか?」
エリ「聞いてくださいフローラ様! 僕、明日初めての任務に出かけるんです!」
フロ「まぁ……! やっと父が貴方を認めたのですね」
エリ「へへ、認めてくれたかどうかはわからないですけどね。
任務を成功させて、絶対次の任務に繋げてみせます!」
フロ「ふふ、がんばってくださいね」
エリ「ありがとうございます! じゃあ、僕明日の準備をしてきますね!」
走り去るエリク。
ヴェ「おっと」
エリ「わわ、ごめんなさいヴェルナーさん! 失礼します!」
ヴェ「こけるなよ」
気まずそうに目を逸らすフローラ。
フロ「……」
ヴェ「ボスに頼んだのはフローラ様じゃなかったんですか?」
フロ「……うるさいわね。いいじゃない別に。彼はもう十分力を持ってるわ」
ヴェ「それは承知してます。でも頼んだ理由はそれだけじゃないですよね」
フロ「い、言わないで! そんなんじゃないから」
ヴェ「(笑いながら)はいはい」
【翌朝、ギルド内・出入口】
エリ「おはようございます……」
ヴェ「眠そうだな、エリク」
エリ「へへ……早く寝ようとしたんですけどね」
ヴェ「楽しみで眠れなかったんだな?」
エリ「正解です」
ヴェ「はは、じゃあ気を付けていってこい。駅でラルスが待ってるはずだ」
エリ「はーい! 行ってきます!」
慌てて出てくるフローラ。
フロ「エリクさん……!」
エリ「フ、フローラ様?」
フロ「え、えっと、行ってらっしゃい」
エリ「はい! 行ってきます!」
立ち去るエリク。
ヴェ「眠そうですね、フローラ様」
フロ「……なによ、文句ある?」
ヴェ「いいえ?」
【駅】
エリ「はぁ……はぁ……ラルスくん、どこにいるかな」
ラル「おい」
エリ「ひっ」
ラル「お前がエリクか」
エリ「……僕、もしかして存在知られてなかった……?」
ラル「興味のないものは覚えないからな」
エリ「ひどいっ……!」
ラル「さっさと行くぞ」
エリ「え、あ、ちょっと待ってよ!」
【列車内】
エリ「きょ、今日はいい天気だよね。任務日和って感じでさ!」
ラル「……」
エリ「僕実は今日が初任務でね、ちょっと緊張してるんだぁ」
ラル「……」
エリ「え、えっと、ラルスくんは好きな食べ物とか」
ラル「なぁ」
エリ「はい!」
ラル「少しは黙れねぇのか」
エリ「ご、ごめん」
ラル「はぁ……まぁいい。今回の任務の詳細は聞いているか」
エリ「あ、ううん。依頼人から聞くんじゃないの?」
ラル「いや、今回はボスから既に聞いている。だから直接現場に向かう」
エリ「う、うん」
ラル「今回の任務は、西にある屋敷に忍び込み、ペンダントを取ってくる」
エリ「え……泥棒ってこと?」
ラル「ちげぇよ最後まで聞け。
そのペンダントは元々市長の娘が大切にしていたもので、先日盗まれたそうだ」
エリ「取り返すってこと?」
ラル「そうだ。イカレちまってる奴らの住む屋敷らしいからな。気を引き締めていくぞ」
エリ「わ、わかった」
【屋敷前】
エリ「ここが……初任務の場所」
ラル「何してんだよ。早く裏口探すぞ」
エリ「うん!」
裏口を見つけるラルス。
ラル「ここが怪しいな」
エリ「僕に任せて!」
ラル「は? おい」
裏口に触れるエリク。
エリ「いたっ!」
ラル「……電流か。不用意に触るんじゃねぇよ。下がってろ」
エリ「何を……」
ラル「手袋だ。これなら電流を通さない」
エリ「すごい」
ラル「お前、もう勝手にあっちこっち触ったりするんじゃねぇぞ」
エリ「う、うん」
ラル「はぁ……。潜入は任務の基本だからな。さっさとブツを盗み出すぞ」
エリ「言い方が完全に悪党だよ……」
ラル「行くぞ」
エリ「うん!」
【屋敷内】
エリ「わぁ、広い」
ラル「……人の気配はねぇな」
エリ「そうだねぇ。わっ」
つまづくエリク。と同時に、刃物の雨が降る。
エリ「うわああっ」
ラル「ちっ」
エリクを引っ張りながら避けるラルス。
エリ「あ、ありがとうラルスくん」
ラル「何してんだよお前」
エリ「なんか、ワイヤーに足引っかけちゃったみたいで……へへ」
ラル「罠だな。気を付けろ。……いやむしろお前帰れ。足手まといだ」
エリ「そ、そんな……! 大丈夫だよ! 次は引っかからない!」
ラル「はぁ……。次はないからな」
ラル「次はないからなって言ったよな?」
エリ「ご、ごめんって」
ラル「ったく、何律儀に全部の罠に引っかかってんだよ」
エリ「いやぁ、まさか刃物が振り子になってたり、炎が噴射してきたりするとは思ってなかったなぁ」
ラル「呑気か。あげくに落とし穴にまで引っかかりやがって」
エリ「へへ……」
ラル「まぁ過ぎたことはいい。広い所に出たが、脱出方法を考えねぇとな」
グレ「兄さん、なんか獲物が掛かったみたいだぞ」
ヘン「本当ね、姉さん。滑稽だわ」
ラル「誰だ!」
グレ「お前らこそ誰だぁ? 俺らの屋敷に勝手に入ってきてさぁ」
ヘン「そういうの不法侵入って言うのよ。覚えておきなさいね」
エリ「変な人たちだね……口調逆にすればいいのに」
ヘン「聞こえてるわよ」
グレ「失礼な奴だな」
ヘン&グレ「おしおきしないとね」
ラル「ちっ、やるしかねぇか」
エリ「あ、ペンダント!」
エリクが指さす。グレーテルは首元に触れる。
グレ「あぁ? これのことか?」
ヘン「あげないわよ。盗むの苦労したんだから」
ラル「厄介だな。……お前は下がってろ」
エリ「え、でも」
ラル「下がってろ」
エリ「……はい」
走りだすラルス。二人に向かって攻撃を繰り出す。
ラル「おらっ」
グレ「甘いな!」
ヘン「ふふ、こっちよ!」
攻撃を仕掛けるラルスに、避けるグレーテルとヘンゼル。
ラル「くそっ……うろちょろしやがって」
エリ「ラルスくん!」
ラル「あ?」
エリ「階段見つけたよ! 戻ろう!」
ラル「は? いやまだペンダントが」
エリ「ここにある!」
エリクがペンダントを掲げる。
グレ「ああ!?」
ヘン「なんで!?」
ラル「お前いつの間に」
エリ「僕、手癖が悪いんだよね」
ラル「ふっ……じゃあ行くぞ!」
エリ「うん!」
二人は広い場所から脱出する。
ラル「くそっ、しつけぇな」
エリ「大丈夫だよ」
ラル「あぁ?」
グレ「おい待てよ!」
ヘン「待ちなさいよ!」
エリ「たしか、ここに」
壁に触れるエリク。
ラル「は?」
エリ「よし、起動」
炎が噴出する。
グレ「ぎゃああ」
ヘン「ひゃああ」
ラル「お前」
エリ「罠の起動なら任せて! 全部覚えてるから!」
ラル「ふっ……だてに全部の罠に引っかかってねぇな」
エリ「へへ」
ラル「褒めてねぇっての。行くぞ!」
エリ「うん!」
裏口まで戻る。ボロボロのグレーテルとヘンゼル。
グレ「ぜぇ……ぜぇ……逃がすかよ」
ヘン「はぁ……はぁ……逃がさないわよ」
エリ「しつこいね……」
ラル「ちっ、めんどくせぇな」
エリ「どうしよう……あっ」
ラル「あ?」
エリ「この扉、電流流れるんだよね」
ラル「は? そうだけど、外側からだぞ。何してんだ?」
扉をいじるエリク。
エリ「できた! さぁ、帰ろうラルスくん!」
グレ「おい、こらぁ!」
エリ「閉めて!」
扉を閉めるラルス。電流が流れる音がする。
グレ「うわああ」
ヘン「ぎゃああ」
ラル「何したんだ?」
エリ「内側から電流が流れるようにしたんだ」
ラル「……そんな特技持ってたのかよ」
エリ「へへ、手癖が悪いって言ったでしょ?」
【ギルド内】
エリ「ただいま!」
フロ「(食い気味に)お、おかえり……なさい」
ヴェ「おかえり、エリク、ラルス。どうだった、初任務は」
エリ「緊張しましたけど、楽しかったです!」
ラル「もうこいつとは組みたくねぇな」
エリ「ええ!?」
ヴェ「はは、大変だったみたいだな」
フロ「お怪我はありませんか?」
エリ「はい! 大丈夫でしたよ、フローラ様」
フロ「それならよかったです」
ヴェ「怪我がないのはいいことだけどな、エリク」
エリ「はい?」
ヴェ「盗んだもの、全部出してみろ」
ラル「は?」
エリ「あー……やっぱり、ばれちゃいました?」
フロ「……また、やってしまったんですね」
エリ「わ、わざとじゃないんですよ! ただ、そこにあると盗りたくなるっていうか」
ラル「盗ってきたのってペンダントだけじゃねぇのかよ」
エリ「へへ」
ラル「お前なぁ……」
エリ「僕、手癖が悪いんだ」
ヴェ「はぁ……次の任務は見送りだな」
エリ「そ、そんなぁ!」